【政府労災】特別加入が必要な場合はどんな時?
こんにちは。
日本上空にミサイルが飛ぶ事がありますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて先日、とある企業様からのご相談で労災の特別加入について質問がありました。
上乗せ労災保険にすでに加入済みだが、海外出張で必要なのか?と言うものでした。
結論から言いますと、今回の出張のケースでは特別加入の必要はありませんでしたが、様々なケースがありますので少しまとめていきたいと思います。
■労災とは?
念のため労災の概要について簡単にまとめておきますが、すでにご存知の方は読み飛ばしてください。
労災とは労働災害の略称。仕事や通勤中にケガをしたり、仕事が原因で病気になったり死亡したりする災害です。
こうした労働災害が起こった時に、国から保険金の支給を受けることができる制度が労働保険制度です。
一人でも従業員を雇っている企業は労災保険への加入が義務付けられていて、保険金は企業が支払います。
従業員は雇用形態に関わらず、労働災害が認められれば保険金を受け取ることができます。正社員であっても契約社員やアルバイトであっても同じです。 外国人でも受け取ることができます。
ちなみに「無過失責任」なので、例えばケガの原因が従業員のミスであっても原則労災と認められます。
■海外で働く人のための 「特別加入」制度
では、海外で働く場合は労災保険は適用されるんでしょうか?
本来、労災保険は日本国内の事業を対象としているので、日本で働く人に適用される制度です。
ただし、「特別加入」という手続きをすることで海外で働く人にも適用されるんです。
もちろん、一言で「海外で働く人」と言っても様々なケースがあるのですべての人が対象になるわけではありません。
■特別加入の対象者
特別加入の対象者は、下記の①〜③に該当する人のみです。
①日本国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人
「日本国内の事業主」→日本で労災保険に加入している事業主。
「海外で行われる事業」→海外支店、現地法人、提携先企業など。
②日本国内の事業主から、海外にある中小規模の事業に事業主等として派遣される人
③独立行政法人国際協力機構などの団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人
このように、いずれも「日本の事業からの派遣」が条件となっているので、日本法人から配置転換された「駐在員」や在籍出向する「出向者」が主な対象者になると思われます。
ちなみに、これから海外へ派遣される人だけでなく、すでに海外に駐在している人の加入も可能です。
■現地採用者には適用外!
日本からの派遣が条件である以上、現地採用の場合は労災保険に「特別加入」することはできません。
このことは、現地採用の見落とされがちなデメリットであるといえるでしょう。
また、「移籍出向」の場合も日本の企業との労働契約を終了させるため、おそらく特別加入は適用されないと思われます。
■海外出張者は特別加入の必要なし
駐在や現地採用の他に、海外で働くケースとして考えられるのが「海外出張」です。
海外出張の場合は特別加入の手続きをする必要はなく、出張元から労災保険の給付を受けることができます。
ただし注意が必要なのが海外出張の定義です。
また、「海外出張」と「海外派遣」の一般的なケースとして、以下が例示されています。
●海外出張の例
・商談
・技術・仕様などの打ち合わせ
・市場調査・会議・視察・見学
・アフターサービス
・現地での突発的なトラブル対処
・技術習得などのために海外に赴く場合
●海外派遣の例
・海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先企業など)へ出向する場合
・海外支店、営業所などへ転勤する場合
・海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)に従事する場合(統括責任者、工事監督者、一般作業員として派遣される場合)
つまり、日本と海外のどちらの指揮命令下で働いているかによって「出張」と「派遣」が区別されるため、たとえ長期に渡って海外に滞在していても、日本の事業所に所属し命令に従って働く人は「出張者」であると考えられます。
逆に短期間の滞在であっても、海外の事業所に所属しその指揮下で働いていれば「派遣」として扱われるということでしょうから要注意です。
■海外赴任者は労災について必ず確認しましょう
事業主が制度自体を知らない可能性は十分ありますので、海外赴任を命じられたりその可能性がある人は、事業主に確認しておく必要がありそうです。
もちろん海外で労働災害に遭うケースは稀だと思いますが、事例としては亡くなるケースがあるのも事実。
海外赴任だからといって企業から守られていると過信しすぎないよう心掛けましょう。
■まとめ
海外で働くことについては、特別加入については必要な場合と不必要な場合があります。
事例ごとに判断していくしかありませんので、個別で検討をしていく必要があります。
また、上乗せ労災保険との兼ね合いも出てくると思いますので、無駄なく洩れなく保険加入を検討する必要があります。
渡部